食品香料の種類と選び方を食品業界担当者向けに分かりやすく紹介
製品開発において、香料の選定は成功を左右する重要なポイントです。しかし、一言に食品香料といっても、その種類は天然から合成まで多岐に渡ります。
「新製品に特徴的な香りを加えたいが、どんな種類の香料を選べば良いか分からない」
「安全性は本当に担保されているのか?」
といった疑問も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、食品開発や原料購買の担当者様に向けて、食品香料の基本的な知識から、天然・合成といった種類の違い、消費者が懸念する安全性、製品開発を成功に導くための選び方まで、専門家の視点から網羅的に解説します。
目次
食品香料の基礎知識
食品香料とは、食品に特定の香りを付与したり、風味を増強・補強したりする目的で使用される食品添加物です。製品の第一印象を決定づけ、消費者の購買意欲を刺激するなど、商品開発において極めて重要な役割を担います。
食品香料の主な種類
食品香料は、その由来や製法によって、大きく「天然香料」と「合成香料」に分類されます。以下、それぞれの特徴と具体的な種類を詳しく見ていきましょう。
1. 天然香料
天然香料は、野菜、果物、スパイスといった植物や、肉、魚、乳製品などの動物を原料として作られる香料です。
原料となる天然物から、香気成分を物理的な方法(圧搾、抽出、蒸留など)で取り出して製造されます。原料由来の複雑で、深みのあるナチュラルな香りが特徴です。
【原料例】
- 植物性: バニラ、シナモン、柑橘類(レモン、オレンジ)、ミント、ジャスミンなど
- 動物性: かつお節、きのこ類、バター、チーズ、ビーフエキスなど
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2. 合成香料
合成香料は、化学的な手法を用いて製造される香料です。特定の香気成分を効率的に、かつ安定して製造できるのが特徴です。
また、合成香料はその構造によって、さらに2つのタイプに分類されます。一つは、バニラの香りの主成分である「バニリン」のように、天然の食品中に存在する香気成分と全く同じ化学構造を合成して作られるもの。
もう一つは、綿菓子のような甘い香りを持つ「エチルマルトール」のように、自然界には存在しない新しい化学構造を人間が作り出したもので、どちらも国の厳しい安全基準をクリアしたものだけが使用されています。
食品香料の安全性
「香料は体に悪いのでは?」「発がん性はないの?」といった疑問は、一般消費者だけでなく、製品開発を担当するプロフェッショナルにとっても重要な関心事です。ここでは、国の制度や科学的根拠を基に、食品香料の安全性について解説します。
食品添加物としての規制と安全性評価
日本国内で正規に流通し、使用が認められている食品香料は、科学的に安全性が確認されたものだけです。日本の食品添加物は、食品安全委員会によるリスク評価を受け、厚生労働大臣が安全と認めたもの以外は、製造・使用・販売が禁止されています。
FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が設立した合同食品添加物専門家会議(JECFA)など、国際的な専門家会議でも、動物試験などの科学的なデータに基づき、一つひとつの物質の安全性が厳密に評価されています。
香料の一括名称表示とアレルギー表示
食品の原材料表示で香料が「香料」とまとめて表示をされているのを見たことがあるでしょう。これは、食品表示法で認められている一括表示です。
香料は使用される種類が極めて多く、かつ製品に占める割合(使用量)がごく微量であるため、個々の物質名をすべて記載する代わりに「香料」という一括名での表示が許可されています。
ただし、アレルギー表示対象品目(特定原材料28品目)に由来する原料から作られた香料については、注意が必要です。
例えば、エビやカニ、乳、オレンジ、キウイフルーツといったアレルゲン由来の香料を使用する場合、サプライヤーはアレルゲンに関する正確な情報を提供し、製品開発者はそれを基に適切な表示を検討する必要があります。
永和物産では、こうしたアレルゲンに関する情報提供も、規格書を通じて正確に行っています。
業務用食品香料の選び方
ここでは、自社製品に最適な香料を選定するための実践的なポイントを5つに絞って解説します。
1. 目的と用途
製品にどんな香りを付けたいのかを明確にしましょう。「いちごの香りを主役にしたい」「肉の風味を補強したい」といった目的をはっきりさせることが、香料選定の第一歩です。
逆に「原料が持つ不快な臭いを消したい」という消去法から考えるのも有効です。このように目的を定めることで、選ぶべき香料の種類が見えてきます。
2. 対象食品との相性と耐性
香料の選定では、最終製品の製造条件(pH、加熱工程の有無など)に対する耐性も、香りの再現性を左右する重要な要素です。例えば、焼き菓子には耐熱性の高い香料が、酸性飲料には耐酸性に優れた香料が不可欠です。
たとえ優れた香りでも、適性を見誤ると、製造工程で香りが飛んだり変質したりしてしまいます。製品の特性に合った耐性を持つ香料を選ぶことで初めて、狙い通りの風味を消費者に届けることができるのです。
3. 香料の形態
香料の選定では、形態が自社の製造ラインに適しているかを考えることも大切です。
液体(水溶性/油溶性)や粉末、ペーストなど、香料には様々な形態があります。例えば、飲料やソースには均一に混ざりやすい液体タイプを、スナックのシーズニングには付着しやすい粉末タイプを選ぶのが一般的です。
自社の製造設備やレシピに合った、最もハンドリングしやすく、作業効率を高められる形態を選ぶことで、生産トラブルのリスクを減らし、スムーズな製造体制を維持できます。
4. 法規制と各種認証
国内の食品衛生法や食品表示法に準拠していることは大前提ですが、それだけでは十分でない場合があります。
輸出を考えるならハラル認証、健康志向を訴求するならオーガニック認証など、ターゲット市場が求める認証がなければ、ビジネスは展開できません。将来の販路拡大までを見据え、必要な認証に対応できるサプライヤーかを見極めることが大切です。
5. 供給の安定性とサポート体制
ビジネスを長く続けるためには、原料の供給安定性と、サプライヤーのサポート体制を基準に選ぶ視点も重要です。例えば、世界中に調達網を持つサプライヤーや、技術的な質問にすぐ答えられる専門スタッフがいる企業は、長期的なパートナーとして信頼できます。
確かな供給力と手厚いサポート体制を持つサプライヤーを選ぶことで、将来的な欠品リスクや開発の遅延に悩まされることが少なくなるでしょう。
まとめ
食品香料は、製品の第一印象を決定づけ、価値を大きく左右する極めて重要な要素です。製品開発を成功させるためにも、本記事で解説した香料の種類や特性、安全性を正しく理解し、目的に合ったものを選定しましょう。
永和物産では、多種多様な食品香料を取り揃え、豊富な知識と経験でお客様の製品開発をサポートいたします。香料の選定や仕入れ、製品開発でお悩みの場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
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