クラフトビールの原材料を解説|主原料4種から個性を生む副原料の選び方・仕入れ先まで
「麦芽・ホップ・酵母・水」という主原料4種は、クラフトビールも大手量産ビールも変わりません。では、クラフトビールが無数の個性を生み出せる理由はどこにあるのでしょうか?その答えの多くは、副原料にあります。
2018年の酒税法改正により、かつお節・みそ・茶・果実・スパイスなど多彩な素材がビールの副原料として解禁され、クラフトビールの表現の幅は飛躍的に広がりました。
一方で、「どの副原料を選べばコンセプトが伝わるか」「品質のばらつきをどう管理するか」「酒税法上の表示区分にどう影響するか」といった実務的な疑問に答えてくれる情報は、まだ多くありません。
本記事では、クラフトビールの主原料4種の基礎から、差別化に直結する副原料の種類・法規制・仕入れのポイントまでを醸造・開発担当者向けに解説します。
目次
クラフトビールの主原料4種
クラフトビールの基本原料は「麦芽(モルト)」「ホップ」「酵母」「水」の4種類です。これらの選び方・産地・配合比率だけでも、すでに無数の味わいが生み出されます。
クラフトビールと大手量産ビールで原料の種類自体は基本的に同じですが、素材の品質へのこだわりと酵母・副原料の選択に大きな違いがあり、それがクラフトビール固有の個性につながっています。
麦芽(モルト)
麦芽はビールの骨格を形成する主原料です。発芽させた大麦を乾燥・焙燥したもので、種類や焙燥温度によってビールの色・甘み・コク・香ばしさが大きく変わります。
大麦は収穫した状態では糖分が十分に含まれていません。発芽させることで種子内の酵素が活性化し、デンプンを糖に変える準備が整います。この状態で乾燥させたものが麦芽です。ビールのアルコールと炭酸ガスは、この糖を酵母が食べることで生み出されます。
麦芽の種類は大きく2つに分けられます。
- ベースモルト(ペールモルト等):淡い色のビールの土台となる主要麦芽。麦芽全体の大部分を占める
- スペシャルティモルト(クリスタルモルト・ロースト麦芽等):色や風味を調整する補助麦芽。複数を組み合わせることでクラフトビール固有の個性が生まれる
なお、酒税法上「ビール」と表示するには、麦芽比率が原料全体の50%以上であることが条件です。
ホップ
ホップはビールに苦味・香り・防腐効果を与えるアサ科の植物で、クラフトビールの差別化において最も重要な原料のひとつです。品種によって柑橘系・フルーティ・ハーバル・松脂系など香りの個性が大きく異なります。
ホップの種類は大きく2つに分けられます。
- アロマホップ:香り重視の品種。IPA・ペールエールなど香り高いビールに使用
- ビタリングホップ:苦味成分(α酸)が高い品種。苦味を効かせたいスタイルに使用
また、発酵後にホップを直接投入する「ドライホッピング」という手法では、加熱によって飛びやすいフレッシュなホップ香を引き出すことができ、クラフトビールならではの香り設計を可能にしています。
ホップの成分・機能性・食品業界での活用については、「ホップの種類と特徴を解説|分類・産地別品種から食品業界での活用目的まで」で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
酵母
酵母は麦汁中の糖をアルコールと炭酸ガスに変換する微生物で、ビールの風味を大きく左右します。エール酵母(上面発酵)とラガー酵母(下面発酵)の2種類が基本であり、どちらを使うかでビールのスタイルが根本的に変わります。
- エール酵母(上面発酵):15〜25℃の高温で発酵。フルーティで複雑な香りを生み出し、IPA・スタウト・ヴァイツェンなどに使用
- ラガー酵母(下面発酵):5〜10℃の低温でゆっくりと発酵。すっきりクリーンな味わいのピルスナー等に使用
水
ビールの重量比の約90%を占める水は、味わいを左右する重要な原料でありながら、見落とされがちな要素でもあります。水の硬度(ミネラル分の濃度)によって相性の良いビアスタイルが異なります。
- 硬水:カルシウム・マグネシウムが豊富。IPAや苦味の強いビールに向く
- 軟水:ミネラル分が少なく、クリーンでまろやかな仕上がり。ピルスナーやラガーに向く
醸造所の立地選定に仕込み水の水質が大きく影響するのはこのためで、地下水を活用するケースも多くみられます。
クラフトビールの副原料一覧と酒税法の関係
副原料とは、主原料4種以外にビールの風味・個性付けに使用される原材料のことです。日本の酒税法では使用できる副原料が定められており、その使用比率によってビールか発泡酒かの表示区分が変わります。
2018年の酒税法改正で副原料の扱いはどう変わったか
2018年の酒税法改正以前は、ビールに使える副原料は穀物・でんぷん・糖類などに限られており、スパイス・ハーブ・果実を使うと「発泡酒」扱いになっていました。この規制がクラフトビールの表現の幅を大きく制約していたのです。改正後は多彩な素材が「ビール」副原料として新たに認められるようになりました。
| 項目 | 改正前(〜2017年) | 改正後(2018年〜) |
| 使用できる副原料 | 麦・米・とうもろこし・こうりゃん・ばれいしょ・でんぷん・糖類・一定の苦味料・着色料 | 左記に加え、果実・コリアンダー・香辛料・ハーブ・野菜・そば・ごま・はちみつ・みそ・食塩・花・茶・コーヒー・カカオ・かつお節・こんぶ・わかめ等 |
| スパイス・ハーブの使用 | 発泡酒扱い | ビールとして使用可能 |
| 果実の使用 | 発泡酒扱い | ビールとして使用可能 |
| 日本固有素材(みそ・かつお節等) | 発泡酒扱い | ビールとして使用可能 |
この改正がきっかけとなり、日本のクラフトビール市場における原料表現の多様化は一気に加速したといえるでしょう。
「ビール」と「発泡酒」の分類に関わる副原料の使用比率
日本では麦芽使用比率が50%以上、かつ副原料の使用比率が麦芽重量の5%未満であれば「ビール」表示が可能です。5%を超えると「発泡酒」表示になりますが、これは品質や価格が劣ることを意味するわけではありません。
クラフトビールでは、個性的な副原料を多用するために意図的に発泡酒表示を選ぶケースも多くあります。副原料の比率設計は、コンセプト・ターゲット・コストのバランスを考慮した戦略的判断が必要です。
差別化のポイントとなる副原料の種類
クラフトビールの個性・差別化を生み出すのが副原料です。スパイス・ハーブ・果実・穀物・日本固有素材など多彩な選択肢があり、どの副原料を選ぶかでビールのコンセプト・ターゲットが変わります。
スパイス・ハーブ系(コリアンダー・シナモン・山椒・レモングラスなど)
スパイス・ハーブはクラフトビールに香りと個性を加える代表的な副原料カテゴリです。コリアンダーシードはベルジャンホワイトの必須素材として知られており、爽やかで甘みのあるスパイシーな香りが特徴です。
シナモン・クローブは冬季限定のウィンタービアに、レモングラス・カモミールは南国風・リラックス系ビールに活用されます。
特に注目したいのが、山椒・ゆずといった日本固有のスパイス素材です。和クラフトビールの差別化素材として国内外で注目度が高まっており、「日本のクラフトビール」としての独自性とストーリー性を打ち出す素材として有望です。
果実系(オレンジピール・各種果汁・フルーツピューレなど)
果実副原料はフルーツビールや夏季商品に欠かせない素材です。生果実・乾燥果実・果汁・ピューレ・濃縮果汁など形態が多様で、醸造工程や風味のゴールに応じた選択が求められます。
定番のオレンジピール・レモンピールに加え、ラズベリー・さくらんぼはベルギースタイルのフルーツランビックに使われる素材として知られています。濃縮果汁・フルーツピューレは発酵後に添加することでフレッシュな果実感を強く引き出せます。
地元産フルーツを使った地域限定クラフトビールは、地産地消・観光需要の高い製品として市場での話題性も高く、ご当地ブランドとの相乗効果も期待できるでしょう。
穀物・糖類系(小麦・オーツ麦・蜂蜜・ラクトースなど)
穀物・糖類系の副原料はビールの口当たり・ボディ感・甘みを調整する素材です。フレーク小麦・フレークオーツは泡持ち向上とクリーミーな口当たりに貢献し、ヘイジーIPAやヴァイツェンに使われます。
はちみつは甘みと華やかな香りを付与するナチュラルスウィートナーとして、ラクトース(乳糖)は発酵されずに残糖として甘みを残すミルクスタウト・スウィートスタウトに不可欠な素材として知られています。
日本ならではのユニーク副原料(かつお節・みそ・昆布・茶など)
2018年の改正で解禁された「かつお節・みそ・昆布・わかめ・茶・そば・ごま」は、日本独自の食文化を活かしたクラフトビール開発の扉を大きく開きました。
緑茶・ほうじ茶・抹茶は渋みと香りを付与し、和テイストのクラフトビールとして国内外で人気が高まっています。
かつお節はうまみ(グルタミン酸・イノシン酸)をビールに加える全く新しいアプローチとして実際に商品化実績もあり、こんぶ・わかめを使ったご当地クラフトビールは話題性の高い製品として観光需要とも相性が良い素材です。
副原料の選定と仕入れで押さえるべきポイント
クラフトビールの副原料を仕入れる際は、単に種類を選ぶだけでなく、品質・規格・安定供給・酒税法への適合性まで考慮した原料選定が必要です。特にスパイス・ハーブ・香料類は品質のばらつきが大きく、信頼できるサプライヤーの選定が製品の安定品質に直結します。
規格書確認・品質管理・サプライヤー選定
副原料の仕入れでは、原料規格書の確認・産地・成分含有量・衛生管理基準・安定供給体制の確認が基本となります。スパイス・ハーブは農産物のため、産地・気候・収穫時期によって香り・成分が変動しやすい素材です。規格が明確な商品を扱うサプライヤーを選ぶことが、品質管理の出発点になります。
また、副原料の使用前には酒税法上の使用可否・使用比率・表示への影響を必ず確認しましょう。アレルゲン・残留農薬・重金属等の安全性確認が必要な素材もあるため、規格書・試験成績書の取得を徹底することも重要です。
継続的な醸造に向けて、年間を通じた安定調達ができるサプライヤーとの関係を長期的に構築しておくことが、製品ブランドを守る基盤になります。
香料・スパイス副原料の調達なら永和物産へ
永和物産は食品香料・食品添加物・食品素材を幅広く取り扱う専門商社です。クラフトビールの個性を生む香料・スパイス系副原料(オレンジオイル・レモンオイル・スパイス系香料等の食品香料、ホップ由来のイソα酸苦味料等)の調達から製品開発の相談まで対応しています。
コーシャ・ハラール認証品も取り扱っており、輸出向けクラフトビールの副原料調達にも対応可能です。スパイス・ハーブ・香料類の品質・規格・安定供給についてのご相談は、ぜひ永和物産までお問い合わせください。
まとめ
クラフトビールの原材料は「麦芽・ホップ・酵母・水」の主原料4種が基本ですが、差別化と個性を生み出すのはスパイス・ハーブ・果実・日本固有素材などの副原料です。2018年の酒税法改正で副原料の選択肢が大幅に拡大し、クラフトビールの表現の幅は今後さらに広がっていくでしょう。
製品コンセプトに合った副原料を選び、品質と調達の安定性を確保することが、クラフトビールのブランドを守る基盤となります。醸造コンセプトに合った副原料の選定・調達については、ぜひ永和物産にお気軽にご相談ください。
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