食用油脂とは?種類や用途、選び方を食品業界担当者向けに解説
食用油脂(しょくようゆし)は、食品の味わいや食感、保存性を決定づける、最も身近な基幹原材料の一つです。食品開発の現場であれば、日常的にその名に触れているのではないでしょうか。
しかし、食用油脂といってもその種類は非常に多く、特性も様々であるため、自社製品に最適なものを選ぶのは簡単ではありません。
そこでこの記事では、食用油脂の基本的な知識から、主要な種類ごとの詳細な特徴と活用例、原料を選定する際の重要なポイントまでを解説します。自社に最適な食用油脂を選ぶ際の参考にしてください。
目次
食用油脂とは?
食用油脂とは、食料として用いられる油脂の総称です。食品開発においては製品の骨格を形作る、極めて重要な基幹原材料です。
一般的に、常温(20℃程度)で液体のものを「油」、固体のものを「脂肪」と呼び分けます。油は植物由来のもの(なたね油、オリーブ油など)が多く、脂肪は動物由来のもの(ラード、牛脂など)が多い傾向にあります。
揚げ物や炒め物で食材に火を通すという基本的な役割はもちろん、風味やコク、なめらかな口当たりといった「おいしさ」そのものを構成します。さらに、乳化や起泡といった、食品に特定のテクスチャーを形成する上でも重要な役割を担っています。
食用油脂の主成分「脂肪酸」とは?
食用油脂の性質を決定づけているのが、主成分である「脂肪酸」です。脂肪酸は、炭素原子が鎖状につながった構造をしており、この鎖の長さや構造の違いによって、常温で固体か液体か、酸化しやすいか、体内でどのように代謝されるかといった油脂のあらゆる特性が決まります。
脂肪酸は大きく「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」に分類され、近年では「中鎖脂肪酸」もそのユニークな機能性から注目されています。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、炭素の鎖がすべて単結合で構成された、化学的に安定した構造を持つ脂肪酸です。
分子が直線状で整然と並びやすいため、常温で固体のものが多く、酸化や熱に対して高い安定性を持つのが特徴です。この性質から、フライ油や製パン・製菓用のショートニングなど、加熱安定性や製品の形状維持(保形性)が求められる用途で広く活用されます。ラードや牛脂といった動物油脂、植物油脂ではパーム油やココナッツオイルに豊富に含まれています。
不飽和脂肪酸(オメガ9、6、3)
不飽和脂肪酸は、炭素の鎖の途中に二重結合を持つ脂肪酸の総称です。二重結合の部分で分子が折れ曲がった構造をしているため、常温では液体のものが多く、一般的な「油」の主成分となっています。二重結合の位置によってオメガ9、6、3などに分類され、それぞれ性質が異なります。
- オメガ9系(オレイン酸など):酸化安定性が比較的高く、なたね油やオリーブ油の主成分。
- オメガ6系(リノール酸など):体内で作れない必須脂肪酸で、大豆油やごま油に豊富。
- オメガ3系(α-リノレン酸など):同じく必須脂肪酸で、アマニ油やえごま油に多く含まれる。
中鎖脂肪酸(MCT)
中鎖脂肪酸(MCT)は、炭素の鎖の長さが、一般的な油脂を構成する長鎖脂肪酸の約半分しかない脂肪酸です。この分子の短さから、体内での消化吸収経路が異なり、摂取後は直接肝臓へ運ばれて、約4〜5倍の速さでエネルギーに変換されるというユニークな特性を持ちます。
体に蓄積されにくいエネルギー源として、健康食品やスポーツニュートリション、医療・介護食の分野で急速に活用が拡大しています。ココナッツオイルやパーム核油に多く含まれており、永和物産では、中鎖脂肪酸(MCT)だけを抽出した高機能性オイル原料を取り扱っております。
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食用油脂の主な種類
ここでは、食品開発で汎用される代表的な食用油脂をピックアップし、それぞれの原料、製法、風味、主な用途などの特徴を紹介します。
1. 大豆油
大豆油は、世界で最も生産・消費されている植物油脂の一つで、大豆の種子から抽出されます。精製された大豆油は、風味や香りにクセがなく、淡泊なのが特徴です。
比較的安価で、酸化安定性も良好なため、家庭用から業務用まで、あらゆる食品に利用されています。
2. なたね油(キャノーラ油)
なたね油(キャノーラ油)は、アブラナ科の植物「なたね」の種子から作られる植物油脂です。
現在、市場に流通しているものの多くは、品種改良によってエルシン酸やグルコシノレートといった不食成分を取り除いた「キャノーラ種」を原料としており、キャノーラ油とも呼ばれます。
オレイン酸(オメガ9)が主成分で酸化安定性が高く、クセのない軽やかな風味が特徴。揚げ物や炒め物、ドレッシングなど用途を選ばない万能性が魅力です。
3. パーム油
パーム油は、アブラヤシの果肉から採れる植物油脂です。常温で半固形であり、酸化安定性が優れています。単位面積あたりの収穫量が極めて高く、安価であるため、インスタント麺やスナック菓子のフライ用油など、加工食品のあらゆる分野で利用されています。
なお、パームの核(種子)から採れるパーム核油は、近年注目されるMCT(中鎖脂肪酸)オイルの主原料です。MCTは、一般的な油より素早くエネルギーになりやすい性質を持つため、健康食品やスポーツ分野で活用が拡大しています。
4. ごま油
ごまの種子を原料とする植物油脂です。ゴマリグナンなどの抗酸化成分を豊富に含んでおり、酸化安定性に優れています。
製造工程での焙煎の有無で性質が大きく異なり、焙煎したごまから作るものは、特有の強く香ばしい香りを持ち、中華料理や和食の風味付けに欠かせません。
5. オリーブ油
オリーブの果実から絞って作られる植物油脂です。主成分はなたね油と同じくオレイン酸(オメガ9)で酸化しにくい性質を持ちます。
用途に応じて、一番搾りで風味豊かな「エキストラバージン」と、精製され加熱に強くクセのない「ピュア」が使い分けられます。
6. 米油(こめ油)
米を精米する際に出る「米ぬか」から抽出・精製される、日本生まれの植物油脂です。γ-オリザノールやトコトリエノールといった独自の抗酸化成分を豊富に含み、酸化安定性が高いのが特徴です。
また、加熱しても油酔いしにくく、風味にクセがないため素材の味を引き立てます。素材の味を活かしたいポテトチップスなどのスナック菓子や、高級料亭の揚げ油として重宝されます。
7. ラード(豚脂)
豚の脂肪組織から作られる動物油脂です。常温ではクリーム状の固体で、加熱すると液体になります。
特有の深いコクと風味があり、炒め物やラーメンのスープ、またパンや菓子の練り込み用として、料理に力強い味わいを加えます。牛脂に比べて融点が比較的低く、口どけが良いのも特徴です。
8. 牛脂(ヘット)
牛の脂肪組織から作られる動物油脂です。ラードよりも融点が高く、常温で固形です。牛特有の力強く甘い風味が特徴で、すき焼きやステーキを焼く際の炒め油として、またハンバーグやカレーのコク出しとして使用されます。
業務用食用油脂の選び方
業務用として食用油脂を調達する際には、品質やコストだけでなく、多角的な視点からサプライヤーや製品を選定することが重要です。以下で、業務用食用油脂の選定ポイントを詳しく見ていきましょう。
1. 用途と機能性
食用油脂は、製品の用途や求める機能性によって、最適な選択肢が異なります。長時間のフライ調理であれば、高温に耐える加熱安定性が重要であり、賞味期間の長い製品であれば、風味の劣化を防ぐ酸化安定性が欠かせません。
油自身の風味を活かすか、素材の味を優先するかの選択も、製品の個性を決める上で大切なポイントです。
2. 原材料・製法
同じ種類の油でも、原料の産地や品種が違えば、風味や脂肪酸のバランスも変わってきます。物理的に搾る圧搾法か、溶剤で効率的に抽出するかなどの製法によっても風味の強弱や酸化安定性、色合いまで大きく異なります。
製品のコンセプトに合わせ、どのような由来・製法で作られた原料が最適なのかを、サプライヤーに確認しておきましょう。
3. 品質・安全性と認証
原料の安全性を客観的に評価する上で、サプライヤーが取得している食品安全認証は重要な判断材料です。
たとえば、HACCPやFSSC22000の認証は、サプライヤーが高いレベルの品質・安全管理体制を構築していることの客観的な証明です。安心して取引できるパートナー選びの指標となるでしょう。
4. 添加物の有無と表示
食用油脂には、品質保持のために酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンCなど)や、フライ時の泡立ちを抑える消泡剤(シリコーン)が添加されている場合があります。
これらの添加物の有無は、最終製品の原材料表示に影響します。「無添加」をコンセプトとする製品を開発する場合は、特に注意が必要です。
5. 供給安定性とロットサイズ
製品を継続的に生産するためには、原料を安定的に調達できることが大前提です。特に植物油脂は天候や国際情勢によって価格や供給量が変動しやすいため、サプライヤーに年間を通じた安定供給能力があるかを確認しましょう。
また、自社の生産規模に合ったロットサイズや最小発注単位(MOQ)での供給が可能かも、事前に確認すべき実務的なポイントです。
6. コストパフォーマンス
原料の評価は、単純なキロ単価だけで行うべきではありません。たとえば、フライ用途であれば、油の寿命(交換頻度)まで含めたトータルコストで考える必要があります。
また、特徴的な風味を持つ高価な油でも、少量で効果を発揮する場合は、実質的なコストインユースは安くなることもあります。製品価値への貢献度まで含めた、総合的なコストパフォーマンスで判断しましょう。
まとめ
食用油脂は、食品の味、食感、機能を支える不可欠な原材料です。大豆油、パーム油、オリーブ油など、種類ごとに特性は大きく異なり、その選定が製品の品質を決定づけます。
自社製品に最適な一品を選定するには、原料の特性を正しく理解し、信頼できるサプライヤーを選ぶことが重要です。
永和物産では、多種多様な業務用食用油脂を取り揃え、お客様の製品開発をサポートしております。原料選定でお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。用途に応じた最適なご提案をさせていただきます。
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