トランス脂肪酸を含まない油とは?業務用代替油脂の種類と選び方を解説

トランス脂肪酸を含まない油とは?業務用代替油脂の種類と選び方を解説

トランス脂肪酸の低減対応は、現代の食品開発において避けては通れない課題です。適切に油脂を選定すれば、商品の風味や食感を損なうことなく、消費者の健康ニーズに応える高品質な商品づくりが可能になります。

ただし、代替油脂の種類によっては、酸化安定性の低下やコストの上昇といった課題が生じる可能性があります。トランス脂肪酸を含まない油を正しく活用するために、業務用油脂の種類ごとの特性や選び方、導入時の注意点を確認しておきましょう。

トランス脂肪酸の基礎知識

トランス脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の一種であり、構造の中に「トランス型」と呼ばれる二重結合を持つものを指します。天然の植物油に多く含まれる「シス型」とは分子構造が異なり、過剰に摂取することで悪玉コレステロールの増加や心疾患のリスクを高める懸念が指摘されています。

油脂の健康リスクを管理する上で、トランス脂肪酸への対策は避けて通れません。成分の特性を正しく把握するためには、油の精製や加工の工程を確認しておく必要があります。

トランス脂肪酸が発生する要因

植物油にトランス脂肪酸が含まれる要因は2つあります。一つは、植物油の精製工程で行われる高温脱臭処理の際に、熱によって脂肪酸の一部が変化し、意図せず微量に発生するケースです。

もう一つは、常温で液体の植物油をマーガリンやショートニングのように固形化させる「水素添加」という工程において、化学反応の副産物として生成されるケースです。

特に「部分水素添加」によって作られた油脂はトランス脂肪酸の含有量が高くなる傾向があるため、食品メーカーではこの技術に頼らない製造手法への切り替えが進んでいます。

トランス脂肪酸0の表示基準

日本におけるトランス脂肪酸の表示は、消費者庁のガイドラインによって定められています。食品100g当たりに含まれるトランス脂肪酸が0.3g未満であれば「0g」や「含まない」といった表示が可能です。

100g当たり0.3g未満という基準が設けられているため、完全に分子レベルで成分をゼロにする必要はありません。

しかし、健康への配慮を示すためには、低減油脂を選定し、商品全体の配合バランスを管理することが重要となります。表示基準を満たしつつ、商品の健康イメージを向上させるためには、含有量を抑えた油脂の選定が不可欠です。

トランス脂肪酸を含まない・少ない業務用油脂

トランス脂肪酸低減という課題を解決するために、食品業界では様々な代替原料が活用されています。ここでは、トランス脂肪酸を含まない・少ない業務用油脂を詳しく見ていきましょう。

1. パーム油

パーム油は、アブラヤシの果実から得られる天然の油脂であり、水素添加を行わなくても常温で半固形を保てるという特徴を持っています。

マーガリンやショートニングの代替原料、いわゆるハードバターとして汎用的に利用されている素材です。トランス脂肪酸をほとんど含まず、かつ酸化安定性にも優れているため、多くの加工食品のベースオイルとして採用されています。

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2. エステル交換油脂

エステル交換油脂は、水素添加技術を使用せずに、油脂に含まれる脂肪酸の配列を物理的または酵素によって組み替える「エステル交換技術」を用いて製造された加工油脂です。

エステル交換技術を用いることで、トランス脂肪酸をほとんど生成することなく、油脂の融点や口溶けを調整することが可能になりました。高度な機能を備えたトランス脂肪酸フリーの油脂として、プロユースの現場で幅広く活用されています。

3. ハイオレイック油脂・こめ油

品種改良によって酸化に強いオレイン酸を多く含ませたハイオレイックキャノーラ油やサフラワー油などは、加熱によるトランス脂肪酸の二次的な生成を抑えることができます。加工工程での品質変化を防ぎ、商品の安定性を高める上で非常に有用な素材です。

また、ビタミンEやガンマオリザノールといった抗酸化成分を豊富に含むこめ油も、劣化に伴う風味の低下が少ない、優れた低減油脂として広く活用されています。

【用途別】トランス脂肪酸対策オイルの選び方

代替油脂の導入にあたっては、商品ごとの製造工程や最終的な食感を考慮しなければなりません。用途に応じた最適な油脂の選び方を整理していきましょう。

揚げ物・フライ用(酸化安定性ランキング)

揚げ物やフライ用では、長時間にわたる高温加熱でも劣化しにくい油を選ぶことが重要です。こめ油やパームオレイン、ハイオレイックキャノーラ油などが推奨されます。

酸化安定性の高さは、原料や条件によって変動しますが、こめ油>パーム油>ハイオレイック油>一般的なサラダ油の傾向があります。酸化に強い油を使用することは、トランス脂肪酸の増加を防ぐだけでなく、商品の油酔い防止や賞味期限の安定化にも直結する重要な要素です。

製菓・製パン・練り込み用(可塑性の確保)

パンやクッキーの食感や、パイの層形成を実現するためには、油脂に適度な硬さと伸びの良さ(可塑性)が必要です。

パーム油やエステル交換技術を用いたショートニングは、従来の水素添加油脂に近い食感を維持しながら、トランス脂肪酸の低減を可能にします。

ドレッシング・生食用(風味と健康)

ドレッシングなどの加熱を行わない用途では、調理過程でトランス脂肪酸が生成される懸念は少ないです。

しかし、商品の健康訴求力を高めるためには、アマニ油やえごま油、オリーブオイルといった付加価値の高い油脂の活用が不可欠です。オメガ3系脂肪酸などの栄養成分を損なわないよう、精製度合いやブレンド比率を管理する必要があります。

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代替油脂導入時の注意点とコスト

低トランス脂肪酸油脂への切り替えはメリットがありますが、同時に開発担当者が直面する課題も存在します。導入を成功させるにも、デメリットを正しく理解しておきましょう。

コストへの影響

一般的な水素添加油脂と比較すると、パーム油やエステル交換油脂、高機能なハイオレイック油脂などは、原料価格や製造コストが高くなる傾向にあります。

商品の販売価格に転嫁できない場合には、複数の油脂をブレンドしてコストを平準化したり、油脂の使用量を調整したりといった工夫が求められます。経済性と健康価値のバランスを最適化する調達戦略が重要です。

飽和脂肪酸とのバランス

トランス脂肪酸を低減するためにパーム油などの固形脂の使用比率を高めると、今度は飽和脂肪酸の含有量が増えるというトレードオフの関係が生じます。

特定の成分を減らすことに注力しすぎて、別の栄養バランスを崩してしまわないよう、全体の脂肪酸組成を俯瞰的に見て設計することが大切です。

まとめ

現代の食品開発において、トランス脂肪酸の低減は避けて通れない課題です。使用する油脂の種類によって酸化安定性や可塑性が異なるため、商品の特性に応じた原料選定が重要となります。

消費者の安全意識に応え続けるためには、単なる成分置換にとどまらず、中長期的な視点での油脂の見直しが不可欠です。高機能な代替油脂を効果的に取り入れ、商品の健康価値と信頼性を高めていきましょう。

永和物産では、低トランス脂肪酸に対応したショートニングをはじめ、パーム油など幅広い油脂のラインナップを取り揃えています。

お客様の商品特性やコスト感に合わせた最適な油脂の提案から、スペック確認まで、きめ細やかにサポートいたします。油脂の切り替えや新規開発をお考えの際は、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。

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